ブログ「川崎ライフ」をお読みいただき、ありがとうございます。kawasaki-citizenです。
会社で長く働いていると、どうしても考えてしまうことがあります。
「社会で活躍する人、最後に評価される人は、何が違うのか」
親になると、どうしても「まずは勉強」「まずは偏差値」と考えがちです。私自身も、子どもには一定の学力を身につけてほしいと思っています。学力は、進学や就職の入口では今でも強い武器だからです。
ただ、社会人として現場に長くいる身からすると、ここははっきり言わないといけません。
その優位性は、ずっとは続きません。
社会に出た瞬間、ゲームのルールが根本から変わるからです。
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学力は大事。でも、それだけではその後が苦しい
先日、教育経済学者・中室牧子さんが出演している動画を見ました。そこで語られていた内容は、私が会社でずっと感じていた違和感を、かなりきれいに言語化してくれるものでした。
要点はシンプルです。
認知能力、つまりテストで測れるような学力だけでは、その後の賃金や社会での成果を十分に説明できない。
そこで重要になるのが、いわゆる非認知能力です。やり抜く力、自制心、協調性、コミュニケーション能力、折れても戻ってくるしなやかさ。中室さんの動画でも、将来の収入や活躍につながる要素として、スポーツ経験やリーダー経験の重要性が語られていました。
この話を聞いて、「やっぱりそうだよな」と思いました。
なぜなら、会社の現場では、まさにそこが決定的な差になるからです。
会社は「頭がいい人」を選別した後の世界
ここはかなり生々しい話です。
会社に入ってくる人は、みんなある程度頭がいいです。学歴もある。論理も通る。資料も作れる。言われたことも一定水準ではこなせる。
つまり、少なくとも一定以上の規模の会社では、「ある程度の頭がいい」はただの前提条件にすぎません。
では、その後に何で差がつくのか。
推進力です。
もっと言うと、次のような力です。
- 利害がぶつかる相手をどう動かすか
- どの順番で話を通すかを考える戦略性
- どこで譲り、どこで押すかを見極める判断力
- きれいごとだけでは進まない局面でのしたたかさ
- それでも相手へのリスペクトを失わない姿勢
- くじけても立て直して戻ってくるしなやかさ
会社で本当に強い人は、ただ賢い人ではありません。
「正しいことを言える人」ではなく、「正しいことを通る形に変換して、前に進められる人」です。
仕事では、正論だけでは前に進みません。相手にも事情があり、部署には歴史があり、建前も本音もある。その中で、どの相手に、どの言い方で、どこまで踏み込むかを考える。ここには、ある程度の狡猾さが必要です。
ただし、狡猾さだけでも長くは勝てません。相手への敬意がなく、信頼が積み上がらなければ、どこかで必ず詰みます。だから必要なのは、戦略性と、リスペクトと、再起力の同時成立です。
そしてこれは、テストの点数ではほとんど測れません。
自分が持てたもの、持てなかったもの
これは自戒ですが、自分には中高大を通じて、ある程度の協調性や継続力は身についた実感があります。
集団の中でやること。嫌なことでも、一定期間は続けること。そういう基本的な耐性は、学生時代の経験の中でそれなりに鍛えられたと思っています。
ただ、明確に足りなかったものがあります。
強いストレスを、ある程度長い期間浴び続け、それでも折れずに乗り越える経験です。
単発でしんどい、ではありません。
- 継続的にプレッシャーがかかる
- 逃げたくなる、失敗もする
- 人にも迷惑をかける
- それでも立て直して、もう一度前に出る
ここを通っていないと、あるレベルまでは行けても、その先でギアを上げ切れない。現場にいると、そういう見えない壁があるのを感じます。
今になって痛感する「取り返しのつかない後悔」
もう一つあります。
私は学生時代、「人をまとめる役割」からかなり逃げてきました。
学級委員、部活のキャプテン、何かの責任者。そういう役割を、面倒くさいと思って避けてきたところがあります。当時はそれで困りませんでしたし、むしろ裏方の方が気楽だと思っていました。
でも社会人になってから、そのツケが回ってきました。
プレイヤーとして個人の仕事をこなすのと、多様な価値観を持つ人たちを一つの方向に向かわせるのは、まったく別の能力です。
今ならはっきりわかります。
リーダーシップは才能ではなく、経験で身につけるスキルです。
しかも学生時代のリーダー経験は、失敗しても人生が終わらない。言ってしまえば、「無料で何度も失敗できる練習場」です。
私はその打席に、あまり立ちませんでした。これは今でも、かなり後悔しています。
だから我が家では「この3つ」を優先する
ここまでの実感と後悔を踏まえて、我が家では教育の優先順位をかなり意識的に決めています。
1. 継続を最優先する
まず大事なのは、何かを続けることです。勉強でも、スポーツでも、習い事でも構いません。ただし、ルールは一つ。
一定期間は、簡単にやめない。
やり抜く力は、「続けた経験」でしか育たないからです。
最近は「合わなければすぐやめてもいい」という空気もあります。もちろん本当に合わないものを無理に続ける必要はありませんが、少ししんどい、少し面倒、少し負けた、その程度で降りる癖がつくと、後でかなり苦しくなります。社会に出ると、その「少し嫌だからやめる」が通じない場面の方が多いからです。
2. 一人で完結させない
二つ目は、人の中に入れることです。
AI時代になれば、個人で完結する能力の価値は相対的に下がっていくと私は見ています。多くの仕事は、人と調整し、利害をまとめ、チームで進める「人間のゲーム」です。
だから、子どもには集団の中で思い通りにいかない経験をしてほしい。意見がぶつかること、我慢すること、自分の意見を通そうとして失敗すること。そういう摩擦が、あとで必ず効いてきます。
3. リーダー役から逃がさない
三つ目は、これが一番大きいのですが、リーダー役から逃がさないことです。
機会が来たら、うまくできなくても一度はやってみる。手を挙げる。やらされるなら引き受けてみる。なぜなら、人をまとめる経験は、後から取り返しにくいからです。
人が言うことを聞かない。責任だけ重い。こういう経験は、若いうちにやった方がいい。
これは「リーダー気質になれ」という話ではなく、「責任を引き受けた経験がある人は、組織の見え方が根本から変わる」という話です。
親として「やらないこと」も決めている
教育方針は、「やること」だけでなく「やらないこと」を決めるのも大事です。我が家では、次の三つは意識的にやりすぎないようにしています。
- 親が過剰に先回りして、全部整えてしまうこと
- 結果だけで評価すること
- 少し嫌だからといって、すぐに逃げ道を用意すること
親が守りすぎると、短期的には快適ですが、長期的には社会を生き抜く「環境耐性」が育ちません。
まとめ:教育は「投資配分」の問題
学力は必要です。受験でも就職でも、入口では明らかに効くからです。でも、その後の人生まで含めて考えるなら、学力だけに投資しすぎるのは危うい。
大事なのは、「学力という入口の武器」と「非認知能力という、その後ずっと効く土台」の投資配分です。
世の中の多くの家庭は、前者に寄りすぎているように見えます。だから我が家では、意識して後者も取りにいきます。
勉強はやらせる。でも、それ以上に「逃げない経験」を積ませる。
守りすぎず、でも壊さない。
今のところ、我が家の教育方針はこの一言に尽きます。


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