食料品の消費税0%に潜む“やさしい罠”

「食料品の消費税を0%にすれば、家計が助かる!」 そんな声、よく聞きますし、確かにわかります。毎日の買い物で払う消費税がなくなれば、感覚的にもラクになる。

でもちょっと待って。 食料品0%は本当に“庶民の味方”なのか? 一見やさしいこの政策には、いくつかの“罠”が潜んでいます。


【罠1】金持ちも恩恵を受ける

食料品は誰でも買うので、確かに全員が得します。でも、たくさん買う人=お金持ちのほうが得する額も大きいのです。

つまり、結果的には「格差を縮める」というより、「格差の構造をそのままにしたまま全体に値引き」しているにすぎないのです。


【罠2】税収が消える→別の形でしわ寄せ

食料品の消費税収は年間3〜4兆円規模。0%にすると当然、その分が国の税収から消えます。

その穴埋めにどうするか?

  • 所得税や法人税を上げる
  • 社会保険料を上げる

→ 結局、違う形で庶民が払うことになるのです。


【罠3】制度が複雑化して、現場が混乱

「これは食品?雑貨?」「持ち帰りなら0%、イートインなら課税?」 ゼロ税率にすると、境界線の扱いがさらにシビアになります。

事業者はインボイス対応も含めて帳簿・請求書管理が複雑に。 特に中小企業や個人商店には大きな負担です。


【罠4】スーパーが得をする?

一見消費者の味方っぽく見えるこの制度。 でも、仕入時には消費税を払っているスーパーが、販売時に0%で売ると?

その仕入時の消費税分は還付される販売価格をほんの少し下げるだけで、むしろ利益が増える構造に

つまり、消費者が得したつもりでも、より得しているのは賢い企業側かもしれません。


【じゃあどうすればいいの?】

消費税0%は一見やさしい。でも本当に助けたいのは誰か?を考えるなら、

  • 低所得者や子育て世帯へのピンポイント給付
  • 食料品は軽減税率にとどめ、給付で逆進性を補う

こうした仕組みのほうが、本当に困ってる人にお金が届きやすいのです。


【まとめ】

消費税0%の裏には、

  • 金持ちがより得をする仕組み
  • 税収不足で回り回って別の負担
  • 事業者の負担と混乱
  • スーパーなど一部が儲かる仕組み

…という、やさしい顔をした罠が潜んでいます。

本当に必要なのは、「誰を助けるか」を明確にした政策です。 消費税は万能ではない。その恩恵の設計こそが、政治の腕の見せ所かもしれません。


【おまけ:図解で理解する】

項目消費税8%のとき消費税0%+5円値下げ
消費者の支払額108円103円
スーパーの売上(税抜)100円103円(全部利益対象)
仕入原価95円95円
利益5円8円(+3円)

つまり、消費税0%をうまく活用できる企業は、値下げしながら利益も増やせるという裏事情もあります。

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