戸籍制度を再設計してみた。家ではなく、“つながり”を記録する時代へ


戸籍って何のためにあるの?

戸籍って、実は「家族をまとめた名簿」のようなもの。結婚や出生で誰が誰と家族なのか、親子・婚姻関係を国が記録する制度です。でも現代の私たちから見ると、ちょっと不思議な点も多くありませんか?

  • 結婚すると姓を変えなきゃいけないの?
  • 子どもが親と別姓だと面倒?
  • 戸籍って結局、家を記録してるだけ?

そんな違和感の正体は、「戸籍=家を主キーにした設計」という古い制度設計にあります。


本来の目的:”家族のつながり”を記録すること

戸籍制度が担ってきた機能は、本来こうです:

  1. 誰の子どもか(親子関係)
  2. 誰と結婚しているか(婚姻関係)
  3. どこで生まれ、どこで亡くなったか(出生・死亡)

つまり、制度の本質は人と人のつながり(法的関係)を記録・証明すること。ところが、現行の制度では“家単位”が前提になっているため、結婚や離婚、再婚などで戸籍が分断されてしまい、履歴をたどるのが難しくなっています。


エンジニア視点:DB設計としての戸籍

現行イメージ:家ごとにテーブルが分かれる

[戸籍:山田家(本籍:東京都)]
├─ 筆頭者:山田太郎
├─ 妻:山田花子
└─ 子:山田一郎、山田美咲
  • 全員が同じ姓で1つのテーブル(戸籍)に属する
  • 誰かが結婚すると別の戸籍に移り、テーブルが増える

このように、DB設計的には**「非正規化された親テーブル」**であり、子どもが結婚するたびに新しいテーブルが作られます。


でも家族の形はもっと多様なはず

  • 夫婦別姓を希望する人
  • 事実婚や同性婚のカップル
  • 養子縁組や再婚家庭
  • 単身者や血縁のない共同生活

こういった関係を戸籍で正しく記録できないのは、“姓”と“家”を同一視する設計が原因です。


じゃあどう再設計する?

目的に立ち返る:”つながり”を記録すればいい

そこで再定義:

“個人IDを主キーにし、親・配偶者・子などとの関係をリンクで記録する”

新しい構造のイメージ:グラフDB的なつながり

[個人ID:12345 山田太郎]
├─ 配偶者:54321(山田花子)
├─ 子:67890(山田一郎)
└─ 親:98765(山田健一)、98766(山田京子)
  • 姓が違ってもOK
  • 再婚・養子など多様な関係を柔軟に記録可能
  • 相続・国籍・扶養などの制度とも連携しやすくなる

段階的な移行プラン

フェーズ内容想定される変化
1. 電子戸籍の本格化紙ベースからの脱却データ検索・共有が容易に
2. 関係DB導入親・配偶者・子をIDでひもづけ戸籍内で姓を統一する必要なし
3. 多姓対応戸籍に複数姓を許可夫婦別姓や多様な家族に対応
4. マイナンバーと統合戸籍と住民・行政情報の一元化行政効率の向上、重複排除

現実に移行できるのか?

技術的には十分可能です。すでにマイナンバー制度が個人単位のID管理を実現しており、各種情報(税・年金・保険)はリンクされています。これに血縁・婚姻関係を加えるだけで、戸籍の本質機能は代替可能です。

課題は主に以下の3点:

  • 法律(戸籍法・民法)の改正が必要
  • 行政システムの刷新にコストと時間がかかる
  • 家族観や文化的価値観の変化に対する社会的合意形成

しかし、段階的移行と選択制を組み合わせれば、現実的な導入も不可能ではありません。まずは「つながりベースの記録」を副制度としてスタートし、希望者のみ利用可能にする方法もあります。


夫婦別姓と戸籍制度:冷静に考えてみる

「夫婦別姓にしたい」「同姓がいい」──この議論、よく炎上します。でも、制度上の問題点だけを冷静に見ると:

  • 現在の戸籍では「同じ戸籍=同じ姓」が必須
  • 別姓のままでは同じ戸籍に入れない設計
  • 法律婚の前提が「姓を一致させること」に依存

つまり、別姓を希望する夫婦が制度上“家族として記録されない”という設計の問題があるわけです。

再設計された戸籍(関係ベース)なら、姓が違っても家族として記録可能。これが制度の柔軟性と多様性を支えます。


皇室との関係は?

ここで気になるのが「戸籍制度を変えると天皇制に影響あるの?」という点。

  • 皇族は一般国民と違い、戸籍に属さず「皇統譜」で記録されている
  • 住民票もマイナンバーも持たない(制度の外にいる)
  • したがって、戸籍制度の見直しは皇室には直接的影響なし

ただし、皇室を離れた女性皇族(例:眞子さん)は、離脱と同時に住民票・マイナンバーが発行され、一般制度に編入されます。

また、将来的に制度が刷新されたとしても、皇統譜は完全に独立して管理されているため、「血統の証明ができなくなる」といった心配はありません。


結論:設計を見直す時期にきている

制度というのは、目的を果たせる限り形は柔軟であるべきです。

  • 家を記録するのではなく、
  • 人のつながりを記録する。

それが戸籍制度の本質だとしたら、今の形式にこだわる理由はありません。

時代に合わせて、制度もアップデートしていこう。
「姓」や「家」に縛られずに、もっと自由で、合理的な社会へ。


おまけ:豆知識

  • 皇族はマイナンバーを持っていない!
  • 戸籍がない代わりに「皇統譜」という専用帳簿で記録
  • 一般人になると、そこではじめて住民票&マイナンバーがつく

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